初めてのオーロラ体験 -氷河キャンプ最後の夜-

幻のローガン山上空に広がるオーロラ

氷河で足止めを食った最後の夕方、いつになく夕日が美しかった。いつものように、トイレを済ませて二枚重ねの寝袋にくるまり就寝した。

1時を過ぎた頃、「わ~ッ、スゴイオーロラだ!」という、青崎嬢の悲鳴のような叫び声で目が覚める。普段ならば、一度入った寝袋からは絶対に出たくない。しかし、オーロラなら、話は別だ。ズボンを履いて、上着を着込み、防寒ブーツを履く。この間も、外は騒がしい。

テントから飛び出すと、北から北西の方向にオーロラが薄っすらと揺らいでいる。「これがオーロラか!」始めてのオーロラ体験である。まだ8月だというのに。


慌てて機材を取り出し、三脚を立て撮影を始めるが、慌てている上にオーロラはぼんやりしているので、どうもうまく撮影できない。1枚目の写真は、左上に長時間露光により赤い写り込みが。2枚目はどこを写して良いのか右往左往している間に雲が湧いてきた。結局、試行錯誤している間に、静かにオーロラは消えていった。惨敗だ。

この晩、青崎嬢はオーロラ出現を予感し、寝ずに待っていたようだ。数時間前には、スタッフの前でスプーンを曲げた。心の距離に一本の境界線が引かれたような、彼女を見る目は「奇異なものを見る目」に変わった。それまで、来年はスタッフで手伝って・・・というレベルまで盛り上がっていたのだが。彼女がアレンジする旅は、さぞかし楽しくエキサイティングに違いない!

天候の都合で予定より長く氷河生活を過ごせたことで、オーロラという最高のタイミングを得た。後に見たオーロラと比べると、この日のオーロラは大きさも規模も劣るが、8月のローガン山に掛かるオーロラは代え難い出会いだった。もし、もう一度チャンスがあるならば、もっとまともな写真が撮りたいと切に願う。相手は自然、その一瞬を待つことの大切さが身に染みた出来事だった。(オーロラが去り、画像をプレビュー、心の中は途方に暮れていた)

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